🌍 クリマニュース 第9号
特集:コーヒーの木をRWA化する「Project Mocha」とは
🔍 特集:コーヒーの木をRWA化する「Project Mocha」とは
Project Mochaは、コーヒーの木そのものをトークン化するケニア発のプロジェクトです。小規模コーヒー農家と世界中の投資家をオンチェーンでつなぎ、気候リスクに晒された農業への資金供給を試みる野心的な ReFi プロジェクトです。すでにプロダクトをローンチ済みで、EthereumのL2であるScroll上で展開しています。Scrollは意外かもしれないですが、エコシステム上では存在感を発揮しており、度々フューチャーリングされていたりします。
仕組み:Invest – Own – Earn
Project Mocha の基本構造はシンプルです。
Invest:1〜1,000ドルから投資可能。目安として 100ドルで成木1本分、投資期間は約5年。
Own:コーヒーの木1本を4つの Mocha Bean Token(MBT) で表現。MBTは Ethereum L2 の Scroll 上で発行され、樹木の部分所有が可能。
Earn:コーヒー販売収益を原資として、年率10%程度(5年で累計約50%)を目安としたリターン を想定しているようです。
トレーサビリティと農家へのインパクト
Project Mocha の特徴は「この木が本当に存在する」ことを担保しようとしている点です。
各木に GPS を付与し、衛星画像で農園をマッピング
樹冠解析などで健康状態をモニタリング
将来的には IoT データとも連携し、気候レジリエントな栽培を可視化
農家側には、高金利ローンに頼らない事前資金へのアクセスや、土壌管理・耐干ばつといった気候レジリエンスのトレーニングをセットで提供し、キャッシュフローと生計の安定化を狙います。これら技術はパートナーであるGainForestによって支えられています。以前ReFiニュースレターでも紹介したことがあります。
日本にも多くのコーヒー愛好家の方々がおられると思いますが、我々の飲むコーヒーはアフリカや中南米の国々に支えられており、それぞれの原産国において国際問題や経済問題に紐づいています。これらの課題をブロックチェーン(ReFi)で少しでも解決に近づくことを願っています。日本にもカバDAOというコーヒー豆に関するプロジェクトがあるので、よければまた調べてください。
文・構成:ビニール(Fracton Ventures株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ ブラジル、COP30をカーボンニュートラル開催──13万トンのCO₂を国連認証CERで相殺
ブラジル政府は、COP30運営に伴う温室効果ガス 約13万 tCO₂ を、CDM(クリーン開発メカニズム)由来のカーボンクレジットを自主的に償却することで全量オフセットし、会議全体を“カーボンニュートラル”として開催したと発表しました。
使用されたのは CDM Project 6573(Caixa Solid Waste Management) のクレジットで、償却は国連レジストリの正式手続きに基づきCAIXAが実施。排出量インベントリは第三者監査を経て作成され、クレジットのシリアル番号もすべて公開されるなど、透明性と完全なトレーサビリティが確保されています。
参加者による追加オフセットも行われ、最終的な中和量は排出量を上回る結果に。COP30事務局は「気候危機に対する具体的な行動として、持続可能な国際会議のモデルを示した」と述べています。
ブラジルは今回の取り組みを通じ、国際イベント運営における実践的な排出管理モデルを提示した形となりました。
■ 五島市、未施業林815haを活かした「つなクレ」始動──生物多様性も評価するボランタリークレジットを創出へ
長崎県五島市は、アイフォレスト、杣林、ヤマハ発動機、一般社団法人みつめる旅の4者と協定を結び、未施業林815haを対象に吸収・除去型のボランタリークレジット(JVC)を創出する共同事業「五島つながるカーボンクレジット(つなクレ)」を開始しました。
本プロジェクトでは、九州大学都市研究センターが率いる NCCC(ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム) が、CO₂吸収量と生物多様性の両面を計測し、国際整合性のある基準に基づいて認証を行う予定です。生態系価値も評価対象に含めたクレジットとしては、九州初の試みとなります。
事業では、ヤマハ発動機が提供する産業用無人ヘリによる LiDAR 計測 と衛星データ分析、アイフォレストの 生物多様性調査 により、森林の現況を高精度で可視化。さらに杣林が10年スパンで森林整備を行い、島内外の人材育成や林業体験なども含めた地域循環型の森林ビジネスを形にします。
発行されたクレジットは企業などへ販売され、その収益を人材育成や森林コミュニティ活動に還元。「森林関係人口」の創出を通じて、保全と地域経済の両立を目指すモデルとなります。
■ 高山市、市有林84haから「G-クレジット」販売開始──ゼロカーボンと森林整備を両立へ
岐阜県高山市は、県独自の森林由来クレジット制度である「G-クレジット」を活用し、市有林約84haで創出した177t-CO₂分のクレジット販売を開始しました。対象となるのは、県の「環境保全林整備事業」により間伐等を実施した(および予定の)市有林で、累計では2,458t-CO₂がプロジェクト登録済みです。
G-クレジットは、適切に管理された県内の森林によるCO₂吸収量を、岐阜県が認証する仕組みで、今回の販売分は令和14年度までの8年間にわたり毎年度分割販売されます。販売価格は相対取引で決まり、購入者はカーボン・オフセット等に活用可能です。
クレジット販売による収益は、市有林の維持管理や整備費用に還元され、ゼロカーボンシティ実現と持続可能な森林経営を同時に進めるスキームとして位置づけられています。申し込みは高山市ホームページを通じて受け付けられます。
✏️ 編集後記:「柿の木NFT」と「金融としてのコーヒー」
今回紹介した Project Mocha を読んでいて、ふと日本の「柿の木NFT」を思い出しました。奈良・五條市の柿の木をNFT化し、収穫体験やオンラインコミュニティを通じて、生産者と「応援したい人」をつなぐ取り組みです。どちらも「木」をデジタル化してつながりをつくるという点ではよく似ています。
ただ、印象としては、柿の木NFTはどちらかというと「応援」と「体験」に比重があり、Project Mocha はより「金融商品」に近い設計だと感じました。前者は地域の農と食を楽しみながら支える“ファンクラブ型”の色合いが強く、後者はRWAとしてコーヒーの木を担保にしつつ、リターンとリスクを投資家と共有する“アグリファイナンス”に寄っています。
どちらが優れているという話ではなく、同じ「木×Web3」でも、目的や設計次第でこんなに性格が変わるのはとても面白いポイントです。日本発のプロジェクトも、応援・体験型にとどまらず、もう一歩踏み込んだ金融・インパクトのデザインができる余地はまだまだありそうだと感じました。
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