🌍 クリマニュース 第6号
特集:ブロックチェーンがつくる新しいカーボン市場(前編)
🔍 特集:ブロックチェーンがつくる新しいカーボン市場(前編)
ReFiの主要分野であり、KlimaDAO JAPANも推進しているカーボンクレジット市場でのブロックチェーン活用。本ニュースレターでは今週と来週にかけて、Carbonmark社のブログを参照し、ブロックチェーンがつくる新しいカーボン市場についてご紹介したいと思います。
カーボンクレジット市場は今、岐路に立っています。国際的な排出削減目標の下で市場規模は拡大を続ける一方、標準の乱立、取引の不透明さ、データの分断が深刻化。複数の認証機関やプロジェクトがそれぞれ独自の仕組みを構築した結果、「つながらない市場」が生まれ、信頼性や流動性が失われつつあります。
こうした課題に対し、ブロックチェーンが市場の基盤インフラとして浮上しています。分散型台帳技術によって取引データを改ざんできない形で記録し、トレーサビリティ(追跡性)と透明性を確保。さらに、DeFi(分散型金融)の技術を応用して、流動性を高め、スケーラブルな市場形成を可能にします。
具体例として、タイの大手グループCP傘下のAscend Bit社がCarbonmarkと提携し、国内最大級のフィンテックアプリTrueMoney Walletにカーボンオフセット機能を統合。ユーザーはワンタップで自分のCO₂排出量をオフセットでき、取引はすべてブロックチェーン上で記録されます。ローンチ1か月で2.7万人が利用し、18万本の植樹に相当するオフセットを実施するなど、ブロックチェーンが個人の気候行動を日常の中に溶け込ませる成功例となりました。
また、KlimaDAOなどが進める「カーボンクラス」の概念は、性質の似たクレジットを束ねて標準化し、価格発見と取引の効率化を促す仕組み。従来のOTC(相対取引)で不透明だった価格形成を、オンチェーンのリアルタイム市場に移行させる動きが進んでいます。
何よりも重要なのは、ブロックチェーンがもたらす信頼の可視化です。Polygonscanのようなブロックエクスプローラーを使えば、どのプロジェクトのクレジットが、いつ、どれだけ取引・償却されたかを誰でも確認可能。資金の流れを森林再生や再エネ事業ごとに追跡できることで、これまで見えなかった「環境価値の実体」が可視化され、企業や自治体の信頼性も向上します。
カーボン市場は今後、ボランタリー(自主)市場とコンプライアンス(規制)市場が統合に向かうと言われています。そのとき、ブロックチェーンは両者を橋渡しする共通インフラ層として機能し、透明で相互運用可能な“気候ファイナンスの土台”を築くことになるでしょう。
ブロックチェーンがもたらすのは、単なるデジタル化ではなく、「信用の構造」を再設計する力。
そして、あらゆる1トンのCO₂削減を“証明できる気候アクション”へと変える、その未来が始まっています。
🔗 参考記事:Building with Blockchain in the Carbon Market — Part 1
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ Bybit発「Blockchain for Good Alliance」とUNDP、社会課題解決フォーラムを開催
暗号資産取引所Bybitが設立した非営利団体Blockchain for Good Alliance(BGA)は、国連開発計画(UNDP)AltFinLabと共同で、ブロックチェーンを社会課題解決に活用する国際会議「Blockchain Impact Forum」を11月4〜5日、デンマーク・コペンハーゲンで開催します。
初日は政策立案者や国連関係者が登壇し、議論内容をまとめた「BGAインパクトレポート」を発表予定。2日目は一般公開され、SDGs達成に貢献するブロックチェーン事例の発表や「Blockchain for Good Awards 2025」授賞式が行われます。
Bybit CEOのベン・ジョウ氏は「ブロックチェーンは理念ではなく、政府・技術者・地域をつなぐ“社会変革の基盤”だ」とコメント。
投機の枠を超え、ブロックチェーンを社会的インパクト創出のツールとして位置づける国際的潮流を象徴するイベントとなります。
また、BGAは今年9月に開催されたETHTokyo ‘25にもスポンサーとして参加しています。
■ 気候変動に関心「9割超」も、1割は「対策しない」──内閣府が全国調査
内閣府は、気候変動に関する全国世論調査の速報結果を発表しました。
調査によると、地球温暖化対策に「取り組みたい」と答えた人は89.2%に達した一方、「取り組みたくない」と答えた人も9.7%いました。
取り組まない理由(複数回答)としては、「効果があるのか分からない」(56.4%)が最多で、次いで「情報不足」「常に意識して行動するのが難しい」がそれぞれ30%超に上りました。
気候変動への関心は依然高く、「関心がある」と答えた人は91.7%。その理由としては、「夏の暑さ」「雨の降り方の激しさ」「洪水などの激甚化」など、身近な体感的変化を挙げる回答が目立ちました。
一方で、国連IPCCが「人間活動が地球を温暖化させた」と断定した見解を知っていると答えた人は34.8%にとどまり、科学的理解とのギャップも浮き彫りになりました。
■ インドネシア、13.4億トンのカーボンクレジット販売へ──世界最大級の市場構築を目指す
インドネシア政府は、13.4億トンのCO₂相当クレジットを国際市場で販売する計画を発表しました。森林保全や再エネ、泥炭地回復などのプロジェクトを通じて創出されたクレジットを活用し、数千億ドル規模の投資を呼び込む狙いです。
取引は国の登録システム「SRN」およびインドネシア証券取引所(IDX)を通じて行われ、2025年からはパリ協定に沿った国際取引も再開されます。販売額は最大6,700億ドル規模になる可能性があり、得られた収益の30%は地域社会や地方政府へ還元。森林保全や再エネ投資に活用されます。
一方で、森林火災などによる「リバーサルリスク」や、クレジットの品質検証体制の確立が課題。政府はVerraやGold Standardと協力し、透明で信頼性の高い市場インフラ整備を進めています。
✏️ 編集後記:9割の「取り組みたい」を、行動につなげるために
内閣府の最新調査では、地球温暖化対策に「取り組みたい」と答えた人が9割を超えるという結果が示されました。これは、日本社会において気候変動への意識がすでに“関心”の段階を超え、“行動”への準備が整いつつあることを意味します。
しかし同時に、「どう取り組めば効果があるのか分からない」「日常的に意識するのは難しい」という声も多く、意欲を行動に変える“仕組み”がまだ十分に整っていません。ここにこそ、ブロックチェーンの出番があります。
ブロックチェーンを活用すれば、個々の行動――たとえば再エネ利用、エコ製品の購入、交通の脱炭素化など――を正確に可視化し、検証可能なデータとして蓄積できます。さらに、それらの成果をデジタルクレジットやポイントとして還元すれば、努力が報われる「参加型の気候アクション」が成立します。
重要なのは、9割の“取り組みたい層”を説得するのではなく、自然と巻き込む設計をすること。
行動が評価され、楽しみながら続けられ、地域や企業と連動して拡張していく。そんなインセンティブ設計こそが、気候変動対策の次のステージだと感じます。
ブロックチェーンはその基盤として、“誰でも参加できる気候行動のインフラ”を支える技術になると期待しています。
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Klima Research Institute(KRI) は、KlimaDAO JAPAN株式会社が運営する
気候金融・カーボンクレジット・再生型経済(ReFi)に関する調査・分析・政策提言機関です。国内外の環境市場や制度動向を独自にリサーチし、企業・自治体・金融機関に対して脱炭素戦略やカーボンクレジット活用のコンサルティングを提供しています。
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現在、カーボンクレジットをブロックチェーン上で取引できるマーケットプレイス「CarbonMall」の開発を進めています。
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“Protocol Studio for Ethereum” を掲げる、日本初のCrypto特化型インキュベーター。
これまでに18のWeb3プロジェクトを育成し、グローバルに送り出してきました。
書籍『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(かんき出版)の著者でもあり、DAO TOKYOなどのイベント開催を通じ、アジアのDAO/Cryptoエコシステムのハブとして活躍しています。
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