🌍 クリマニュース 創刊号
特集:ReFiは地球を救いうるか?|再生金融のいま、そしてこれから
🌱 はじめに:なぜ「クリマニュース」を始めたのか
気候変動、自然破壊、社会的分断。
これらの課題に対し、既存の金融システムだけでは限界が見え始めています。
私たちは今、経済を「搾取の仕組み」から「再生の仕組み」へと変える動きの中にいます。
それがReFi(Regenerative Finance:再生金融)です。
このニュースレター「クリマニュース」は、ReFiやカーボンクレジットを中心に、国内外の再生型経済の動きを毎週お届けする試みです。
日本からも、自治体、企業、個人がそれぞれの立場で参加できるように。そんな橋渡しの役割を担いたいと考えています。
なお、本ニュースレター創刊の背景や目的については、プレスリリースでも詳しくご紹介しています。
🔍 特集:ReFiは地球を救えるか?
ReFiの原点と進化
ReFiは「ブロックチェーン×気候・社会インパクト」を軸に生まれた新しい金融の形。その出発点は、「破壊的な経済成長」から「再生的な循環」へという価値転換にあります。
2021年のカーボンクレジット・ブームを経て、KlimaDAO、Toucan、Flowcarbonといったプロジェクトが次々と登場しましたが、市場低迷を経て淘汰が進みました。
しかし、「生き残った」プロジェクトは着実に現実へと根を張り始めています。
KlimaDAO は、設立から2年あまりで2,500万トン超のCO₂クレジットのオンチェーン化とリタイアを促進し、カーボン市場に明確な価格シグナルを与えました。現在は「Klima 2.0」として、リアルワールド・アセット(RWA)を基盤とした新しいカーボン・インフラの構築を進めています。
Regen Network と Open Forest Protocol (OFP) は、衛星データやIoTを活用したデジタルMRV(dMRV)の先駆者です。2024年には、オフチェーン・レジストリに依存しない形で初のネイティブ・オンチェーン・クレジットを発行。透明性と検証性を両立させた新しい信頼モデルを示しました。
Glow は、太陽光発電をブロックチェーン上で資金調達・収益化するImpact DePIN(分散型インフラ)の代表例。2024年にはFramework VenturesとUnion Square Venturesから3,000万ドルを調達し、再エネ由来の再生可能エネルギークレジット(REC)をオンチェーンで発行しました。「エネルギー×ReFi」のモデルとして注目されています。
GoodDollar は、UBI(ユニバーサル・ベーシックインカム)の仕組みをWeb3で運用する代表的なソーシャルReFiプロジェクト。2024年までに330万ドル超を世界中の受給者に分配し、金融包摂の新たな形を示しました。経済的な「再生」の概念を社会的包摂にまで拡張しています。
これらのプロジェクトに共通するのは、透明性・分散性・インセンティブ設計を通じて、「再生型経済」を実際の社会構造の中でどう機能させるかを実験し続けている点です。
市場、自然、コミュニティ——それぞれの領域を結ぶ「橋」として、ReFiの多層的な可能性を体現しています。
2024年のReFi:回復と模索の年
最新の『The State of ReFi 2025』によれば、2024年は「ReFi再成長の序章」でした。
ReFi関連の資金調達総額は約3億ドル、そのうち2,700万ドルがインパクト投資に回ったとされています。
2024年は「再生的Web3連合(Regen Coordination)」が設立され、共通のIMPACT評価基準(ImpactQF)を導入し、GitcoinやCeloなど複数の組織を横断する資金配分インフラを構築しました。
一方で、オンチェーン・クレジットのリタイア率は12%にとどまり(VCM平均は61%)、依然として「売れるクレジット」を作る難しさが課題として残ります。
また、ReFiの焦点は「カーボン」から「多様な自然資本」へと広がりつつあります。
生物多様性、再生農業、社会包摂、マイクロファイナンス——
それぞれの領域でReFi的アプローチが生まれ、「再生的経済圏」の輪郭が見え始めました。
次の潮流:ReFi 2.0へ
2025年のレポートは、今後のキーワードとして以下を挙げています:
Ethereum Localism:グローバルからローカルへ。地域経済に根ざすWeb3型エコシステム。
BioFi(Bioregional Finance):生態系単位での金融設計。地域再生と国際資金をつなぐ新概念。
Impact DePIN:太陽光・水・データなどの「分散型インフラ」をトークンで管理。
ReF(AI):AIを活用したインパクト報告や資金配分最適化。
Retail Impact Investment:個人が少額で参加できる「再生型投資商品」の拡大。
これらはいずれも、ReFiがより「実装フェーズ」に入ったことを示しています。
もはやReFiは「理想論」ではなく、「現場で動く社会的インフラ」へと進化しつつあります。
結論:地球を救いうるが、道半ば
ReFiは、すべてを解決する魔法ではありません。
けれども、人と自然、資金と信頼の流れをつなぎ直す「再生の仕組み」として、確かに芽を出し始めています。
地球を救うのは一つの技術ではなく、無数の小さな再生の積み重ねです。
その一つひとつを支える土台として、ReFiは今、静かに形を成しつつあります。
参考文献・出典
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 ReFi・カーボンクレジットニュース
■ Nature’s Miracle、ブロックチェーン炭素市場へ2,000万ドル投資
米農業テック企業 Nature’s Miracle(NASDAQ: NMHI) が、台湾のCarbon Credit Corporationから 2,000万ドル相当のカーボンクレジット(約100万トンCO₂削減分) を購入する契約に署名。取得したクレジットはXRP Ledger上でトークン化し、透明性・追跡性の高い取引を可能にします。
プロジェクトは主にアジアと南米の水力・メタン回収事業に基づき、世界最大のレジストリVerra登録案件を活用。Nature’s Miracleは同時に1億ドル規模のEV販売契約をトークン化する計画も発表しており、農業・再エネ・ブロックチェーンを結ぶReFi型の新事業モデルとして注目されています。
■ Web3ゲームが「環境投資の新形態」に―トークン化が再生金融を後押し
ブロックチェーンゲームの世界が、「遊ぶこと=環境貢献」に進化しています。
記事によると、モバイルゲームMy Lovely Planetはプレイヤーのトークンステーキングによって38万本以上の植林を達成。プレイヤーが保有する$MLCトークンは、実際の再生プロジェクト(森林再生・再エネ支援)への投票権として機能します。
他にも、Tanbii が日々のCO₂削減行動をトークン化して報酬化、Crypto Raidersが投機依存から脱した自立型トークン経済を構築するなど、ESG(環境・社会・ガバナンス)を基盤とするWeb3ゲームが拡大中。ブロックチェーンによる透明なデータ管理や、Carbonmark(Klima Protocolから誕生したカーボンクレジットのマーケットプレイス)上でのトークン化カーボンクレジット取引がその基盤を支えています。
市場規模は2023年の約260億ドルから2034年には1,180億ドルに拡大見込み。ゲームを通じた「トークン化されたインパクト投資」が、ReFi(再生金融)の新たな入り口となりつつあります。
■ 「カーボンオフセット自動販売機」が登場
皆さんの周りで身近に使われているカーボンオフセットの例をご紹介。みちのくコカ・コーラボトリングが「カーボンオフセット自動販売機」をキオクシア岩手に設置しました。自販機が使う電力の発電段階で生じるCO₂を、FIT非化石証書(再エネ由来電力の環境価値)で相殺し、実質排出ゼロを実現。コカ・コーラ社として岩手県初導入。従業員が毎日使う“自販機”を通じて環境意識を高め、現場での小さなオフセットの積み重ねを広げていく取り組みです。
■ カーボン市場の「共通言語」誕生:CDOP v1.0が公開(Climate Week NYC)
Carbon Data Open Protocol(CDOP)v1.0が発表。Isometric、Verra、South Pole、Kitaなどを含む連合が、プロジェクトの場所・詳細/アプローチ・開示・発行といった基礎データをオープンソースの共通スキーマで標準化しました。
GCMU・Sylvera・RMI・S&P Global Commodity Insightsが主導し、G20のCCCDMやCAD Trust、UNFCCC(パリ協定6条)と整合。市場の「データ断片化」を解消し、レジストリ/プラットフォーム/投資家の相互運用性を高めて、機関資本が入りやすい土台をつくる狙いです。今後はライフサイクル全体へ拡張予定、採用を広く呼びかけ中。
✏️ 編集後記:カーボン・トレジャリーという新潮流
今週取り上げたNature’s Miracle の動きは、いわば「ReFi版・ビットコイントレジャリー戦略」と呼べるものです。
近年、企業が余剰資金をビットコインに変えて保有する「トレジャリー戦略」が注目されています。米マイクロストラテジーや、国内ではメタプラネット社(東証スタンダード上場)がその代表例で、彼らは法定通貨ではなくデジタル資産を企業の財務基盤として組み込むことで注目を集めています。
Nature’s Miracleが行っているのは、その環境版とも言える試みです。
同社は約2,000万ドルのカーボンクレジットを取得し、それをブロックチェーン上でトークン化することで、「地球環境という価値を自社の資産に組み込む」という新しいアプローチを取っています。言い換えれば、ビットコインが「デジタルゴールド」なら、カーボンクレジットは「デジタルグリーン」として企業の信頼や価値を支える資産になりつつあるのです。
資産の裏付けが「通貨」から「気候」へ移る時代。
この動きが広がれば、企業の財務と環境責任が同じ文脈で語られる未来が現実になるかもしれません。
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Klima Research Institute(KRI) は、KlimaDAO JAPAN株式会社が運営する
気候金融・カーボンクレジット・再生型経済(ReFi)に関する調査・分析・政策提言機関です。国内外の環境市場や制度動向を独自にリサーチし、企業・自治体・金融機関に対して脱炭素戦略やカーボンクレジット活用のコンサルティングを提供しています。
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著者(発行):KlimaDAO JAPAN株式会社
協力:ReFi Japan
監修:Fracton Ventures株式会社
■ KlimaDAO JAPAN株式会社
Web3・ブロックチェーン技術を活用し、日本から気候変動対策を変革する企業です。グローバルで再生型金融(ReFi)を推進する「Klima Protocol(旧:KlimaDAO)」の技術を基盤に、日本市場に適したサービスやシステム開発を通じて脱炭素社会の実現を支援しています。
現在、カーボンクレジットをブロックチェーン上で取引できるマーケットプレイス「CarbonMall」の開発を進めています。
■ ReFi Japan
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“Protocol Studio for Ethereum” を掲げる、日本初のCrypto特化型インキュベーター。
これまでに18のWeb3プロジェクトを育成し、グローバルに送り出してきました。
書籍『Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」』(かんき出版)の著者でもあり、DAO TOKYOなどのイベント開催を通じ、アジアのDAO/Cryptoエコシステムのハブとして活躍しています。
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