🌍 クリマニュース 第23号
特集:サーキュラーエコノミーはカーボンクレジットになるか──KPMG Indiaレポートが示す「循環×炭素」の接続設計
🔍 特集:サーキュラーエコノミーはカーボンクレジットになるか──KPMG Indiaレポートが示す「循環×炭素」の接続設計
サーキュラーエコノミーと炭素市場の交差点
サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、廃棄物削減や資源効率の文脈で語られることが多いテーマですが、ここに「カーボンクレジット」という新たな経済的インセンティブが接続されつつあります。
2026年3月17日、KPMG Indiaは India Climate Week 2026 において、Carbon Markets Association of India(CMAI)との共同で「Circular Advantage: Turning Carbon Savings into Economic Opportunity」と題するレポートを発表しました。同レポートは、廃棄物処理、素材循環、産業プロセス、建設、有機物処理、自然ベースのシステムといった循環型の取り組みが、いかにして計測可能な排出削減量に変換され、カーボンクレジットとして収益化できるかを体系的に整理しています。
インドの制度的背景──CCTSとArticle 6
レポートの背景にあるのは、インドにおけるカーボンマーケットの急速な制度整備です。2022年に改正されたエネルギー保全法(Energy Conservation Act 2022)を基盤として、インド政府はCarbon Credit Trading Scheme(CCTS)の構築を進めています。CCTSはコンプライアンス市場とボランタリー市場の両面をカバーする設計で、490の義務対象事業者に排出原単位目標が設定されています(本号ニュース3本目も参照)。
さらに重要なのが、パリ協定第6条(Article 6)との整合です。第6条は、国連の監督下で国際的なカーボンクレジットの移転を認める枠組みですが、そのためには明確なデータ、厳格なベースライン、透明なモニタリング、追加性の証明が求められます。KPMGレポートは、信頼性の高いトラッキングと会計を備えたサーキュラーエコノミー・プロジェクトであれば、国内市場にとどまらずプレミアム価格のグローバル・バイヤーにもアクセスできると指摘しています。
デジタルMRVと収益化アーキテクチャ
レポートが特に注力しているのが、循環型の取り組みをカーボンクレジットとして成立させるための「インフラ設計」です。具体的には以下の3つの柱が提示されています。
1つ目はデジタルMRV(計測・報告・検証)とレジストリの相互運用性です。素材のフローを追跡し、排出削減量をリアルタイムで計測・報告・検証するためのデジタル基盤が、市場の信頼性を支える「見えないインフラ」として位置づけられています。
2つ目は収益化アーキテクチャ(Monetisation Architecture)です。循環型プロジェクトをパイロットからスケーラブルな気候アセットへと進化させるための構造設計として、集約モデル(aggregation models)、商業化チャネル、ガバナンス体制が整理されています。
3つ目は開発ロードマップです。規制・方法論の基盤整備、都市・産業クラスターへの展開、ファイナンスと市場参加の促進という3段階のフェーズが示されています。
日本市場への示唆
インドの動きは、日本にとっても示唆に富んでいます。日本では GX-ETS の本格稼働やJクレジット制度の拡充が進む中、サーキュラーエコノミーとカーボンクレジットの接続はまだ十分に議論されていない領域です。
たとえば、廃棄物のリサイクルや素材の再利用によるGHG削減量を、どのような方法論でクレジット化するのか。デジタルMRVをどう整備するか。こうした論点は、今後Jクレジット制度やGX-ETSの方法論拡大の中で避けて通れないテーマになるでしょう。
KPMGレポートが提示する「循環×炭素」の接続設計は、インドに限らず、カーボンマーケットの次のフロンティアを考える上での重要なフレームワークです。レポート全文はKPMGのウェブサイトからダウンロード可能です。
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ Grassroots Carbon、土壌炭素計測技術「GroundOwl」を発表──牧草地のカーボンクレジット精度向上へ
米Grassroots Carbonは、EarthOpticsとの提携で開発した土壌炭素計測技術「GroundOwl」のローンチを発表しました。電磁誘導(EMI)センサーを用いて土壌を最大1メートルの深さまで非破壊でスキャンし、牧場全体の土壌有機炭素の高解像度マップを生成する技術です。
業界標準の土壌サンプリング深度が30cmであるのに対し、Grassroots Carbonはすでに1メートル深度でのコアサンプリングを実施しており、GroundOwlはサンプリング間の空間的・時間的ギャップを補完する役割を担います。同社の牧場管理プラットフォーム「PastureMap」との統合も予定されており、2026年中に土壌健全性や炭素の永続性に関する追加ツールも公開予定です。土壌炭素クレジットの計測精度を高めるMRV(計測・報告・検証)技術として注目されます。
■ 豪州NVES排出規制、初回結果が判明──トヨタは約289億円のクレジット獲得、マツダ・日産は罰金
オーストラリアで2024年7月に導入された新車排出効率基準「NVES(New Vehicle Efficiency Standard)」の初回実績(2025年7月〜12月)が公表されました。約62.1万台の新車が登録され、約70%のメーカーが排出削減目標を達成。市場全体で約1,600万NVESユニットのクレジット余剰が生まれています。
注目はメーカー間の明暗です。トヨタはハイブリッド戦略が奏功し、約289億円相当のクレジットを獲得。一方、マツダは約25.4億円、日産は約10.8億円の罰金が発生しました。NVESではクレジットの売買も可能で、排出規制が自動車業界における新たなカーボンクレジット市場を形成しつつある構図が見えてきます。
■ インド、4カ月以内にカーボンマーケット取引を開始──490事業者に排出目標を設定
インドのマノハル・ラル電力相は、Bharat Electricity Summit 2026において、国内カーボンマーケットでの正式な取引を4カ月以内に開始すると発表しました。カーボン証書(Carbon Certificate)の売買を通じて排出削減を促す仕組みで、政府は2026年から490の義務対象事業者に温室効果ガス排出原単位の目標を設定しています。
取引に参加するには事前登録が必要で、炭素証書の中央ポータルもすでに立ち上がっています。世界第3位の排出大国であるインドが国内排出権取引制度を本格稼働させることは、グローバルなカーボンマーケットの拡大にとって大きな一歩です。日本のGX-ETSやEUのETS改革と並び、コンプライアンス市場の国際的な収斂が加速する動きとして注視すべきでしょう。
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