🌍 クリマニュース 第19号
特集:The End of KlimaDAO──「DAOの終わり」が示す次の設計思想
🔍 特集:The End of KlimaDAO──「DAOの終わり」が示す次の設計思想
本稿は、KlimaProtocol(旧KlimaDAO)のFounderであるAlex TaylorがLinkedInに投稿した「The End of KlimaDAO」を、クリマニュース向けに要点整理したものです。結論から言えば、彼が宣言したのは「気候課題の終わり」ではなく、KlimaDAOという形の終わりです。5年間の実験で得た成果と矛盾を正面から認めたうえで、Klima 2.0を「より制約された中立インフラ」として再設計する方針を示しています。
まずAlexは、KlimaDAOの立ち上げを「完成された設計図ではなく、方向性の提示だった」と振り返ります。確信はシンプルで、透明・プログラム可能・グローバルなパブリックブロックチェーンは、断片化した既存のカーボン市場インフラより良い“レール”になり得る、というものです。実際、累計で数億ドル規模のオンチェーン取引高、100万件超のクレジット償却、そして気候アウトカムに向けて技術を結集するグローバルなコントリビューターネットワークなど、実験としての「現実の実績」は積み上がったと述べます。
一方で、同時に「設計は矛盾していた」とも断言します。中立インフラを作っているのか、トークンを通じた資本形成メカニズムを作っているのか。透明性を優先するのか、ナラティブを優先するのか。制度的な信頼性を取りにいくのか、スピード感のあるWeb3文化にネイティブであるべきなのか。彼の言葉では、この緊張は「見た目」ではなく構造問題であり、時間の経過とともに内外の摩擦を生んだ。これが「KlimaDAOを終える」判断の出発点です。
そこからAlexは、5年間の教訓を4点に整理します。①インフラはナラティブより長く残る(市場サイクルが去っても予測可能に機能する仕組みが残る)。②透明性は議論ではなくコードに埋め込む(正当性が個人や裁量解釈に依存すると脆い)。③インセンティブは現実の効用と整合すべき(環境価値と結びつく市場でボラティリティは信頼を損なう)。④制度的市場は制約を課す(VCMはコンプライアンス隣接で関係性ドリブンであり、そこに提供するインフラはその現実を尊重せねばならない)。重要なのは、これらが理論ではなく「時間・評判・反復のコスト」を払って得た学びだと強調している点です。
では、なぜDAOを終えるのか。Alexは、DAOは理念上は開放性とコミュニティガバナンスだが、実務では「北極星(最優先事項)が常に争点化」し続けたと述べます。分散組織は、使命が厳密に定義され、インセンティブが狭く整列している時に強い。しかしKlimaDAOはそこが十分ではなかった。だからスコープを研ぎ澄まし、複雑性を減らし、使命に資さない要素を削いできた結果として、今のKlimaはピークより小さく、リーンで、フォーカスしている。彼はそれを後退ではなく「サイクルを生き残って作り続けると決めたチームの規律」だと位置づけます。
そして提示されるのがKlima 2.0です。これは2021年の復活ではなく「うまくいかなかった要素の除去」だと明言します。テーゼは狭く、しかし明確で、ブロックチェーンは“経済設計が規律的で、ガバナンスが制約されているなら”カーボン市場の中立インフラになり得る。具体的には、裁量的トークン放出をしないこと、ルールベースで自動化された価値フロー、境界が明確なガバナンス、プライバシーに配慮したKYC、比較可能性と償却規律を高める標準化されたカーボンクラス――といった方向性です。さらに、Base上にデプロイしつつ、プロトコルへのアクセスはKYC対応で完全パーミッションレスではないとし、パブリックチェーンの監査可能性・決済スピードと、制度的市場が求める標準の“両立”を狙うとします。重要なのは、矛盾を「消す」のではなく「意図的に管理する」と述べている点です。
最後にAlexは、Klima 1.0がアクティビズムとインフラの間で揺れたのに対し、2.0はインフラを選ぶと宣言します。汚染者を罰する装置でも、思想闘争の道具でもなく、提供するのは監査可能な取引ログ、透明な実行、公正なインセンティブ、予測可能な償却メカニズム。派手さはないが、隠し玉も裁量もない“中立性”こそが強みになる――この言い切りが、今回の文章の核だと言えるでしょう。
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ BYD、豪NVESで炭素クレジット620万を獲得 潜在価値2.17億ドル規模か
中国EV大手BYDが、オーストラリアの新車効率基準(NVES)に基づき約620万件のカーボンクレジットを積み上げたと報じられました。NVESは新車フリートの平均CO2排出目標を設定し、低排出車を多く販売・輸入したメーカーにクレジットを付与。不足するメーカーはクレジット購入で目標達成を補う仕組みです。公的な取引価格は未確定ながら、罰則(CO2 1g/kmあたりA$100)を基準に、実勢は1単位A$50〜60(約US$35)との試算もあり、BYDの保有分は約2.17億ドル相当の「コンプライアンス価値」になり得ます。規制強化が進む中、クレジットはEV先行企業の競争優位と収益機会を同時に生む資産になりつつあります。
■ Verra、初の「デジタル検証済み」クレジットを承認 月次発行へ前進
Verraは2月20日、デジタルMRV(dMRV)パイロットに基づく初のカーボンクレジットを承認しました。対象はコモロ諸島グランドコモロ島の太陽光発電(Verra Project 3788)で、監視データの提出から検証までをSustainCERTが完全デジタルで実施。従来の数年単位の検証を待たず、月次または隔月での高頻度発行を可能にします。パイロットでは承認分の80%を即時発行し、残り20%は安全策として留保。1年後に追加の要件(セーフガード、ステークホルダー対応等)を含む包括的検証を経て残分を発行する設計です。発行の早期化は途上国プロジェクトの資金繰り改善や、買い手の透明性向上に直結する可能性があり、再エネに加えCCSやクリーンクッキングにも拡大が検討されています。
■ 養豚で初のJ-クレジット Eco-Porkが3月にも創出、ENEOSが全量購入へ
養豚DXを手掛けるEco-Pork(東京)は、飼料の工夫で豚の排せつ物由来GHG(主にN2O)を1〜3割削減し、養豚分野で国内初となるJ-クレジットを3月にも創出します。対象はキリシマドリームファームなど3農家で、初回は9カ月分の削減効果として合計約250t-CO2が認定見込み。クレジットは当面ENEOSが全量買い取り、GX-ETSでの活用も見据えます。飼料中の必須アミノ酸(リジン等)バランスを最適化し、未消化分の排出を抑えてN2O発生源を減らす仕組みで、足元では改善飼料が数%安いケースもあるといいます。収益は農家と分配しつつ、臭気低減など副次効果も期待。参加農家が増えれば、同社の管理システム導入拡大にもつながる構えです。
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