🌍 クリマニュース 第17号
特集:カーボンクレジット市場とDeFiの接続
🔍 特集:カーボンクレジット市場とDeFiの接続
本特集は、KlimaProtocol(旧KlimaDAO)のFounderであるDionysusがXに投稿した記事「Preparing a Foundation - Part 1: Looking Back to Look Ahead」を、クリマニュース向けに要点整理したものです。テーマは、「カーボンクレジット市場をDeFi(分散型金融)の土台としてどう接続し直すか」となります。
Dionysusはまず、DeFiの魅力を「コンポーザビリティ(組み合わせ可能性)」と述べています。コード同士を積み木のように組み合わせて新しいプロダクトを作れるだけでなく、時にチームやネットワークも束ねられ、産業向けの「基盤インフラ」が立ち上がる。これが整うことで、従来はオフチェーン資産ゆえに表現が難しかった領域(例:カーボンクレジット)でも、新しいアプリケーションが作れるようになります。
2021年当時、オンチェーンのカーボン市場は「アイデアに近い状態」でした。Mossなど先行事例はあったものの、実務で重要な「償却(retirement)」や、プール化されたトークンの中から特定プロジェクトを選ぶ機能が未成熟で、AMM上での投機的取引が中心だったと振り返ります。さらに、クレジット発行や流動性の面でも、参加者が多様なカーボン流動性へアクセスしにくい構造が残っていました。
そこで登場したのがKlimaDAOです。第一の使命は「より広い種類のクレジットをオンチェーンに持ち込み、十分な流動性を確保すること」。第二の使命は「償却など、カーボン市場の基幹プロセスをトークン化クレジットでも使える形にすること」です。この後者が、のちに「Retirement Aggregator」と呼ばれるスマートコントラクト群につながり、複数のカーボンプールを束ねて、ユーザーが案件を選んで償却できる入口を作ろうとしました。
ローンチ後数カ月で1500万トン超がトークン化され、Klimaは一気に巨大な流動性の供給者になりましたが、皮肉にも「使うためのインフラが追いつかない」問題に直面します。2022年初頭にAggregatorが出るまで、実質的に償却できず、流動性の社会的目的が果たせない期間が生まれた点は、市場の不満要因にもなりました。また、初期のユーティリティはWeb3利用者に偏り、伝統的な市場参加者が使いやすいUIが整ったのは、2023年のCarbonmark登場以降だったと述べています。
並行して重要だったのが、業界受容とレジストリ連携(相互運用性)です。Klimaは2021〜2023年にかけて、BICOWG、BxC Leadership Network、Gold StandardやVerraのワーキンググループなどへ関与し、ブロックチェーンが購入・償却を含む市場プロセスにどう効くのか、またレジストリが求めるトレーサビリティやセキュリティとどう整合させるのかを模索してきました。
そして2026年の再始動(Relaunch)に向け、学びを踏まえた改善点を挙げます。たとえば、過度にコモディティ化されたプールとAMM要件に価格形成が縛られないよう、参加者の知見を価格シグナルへ反映する「より賢い価格メカニズム」を設計すること。さらに、流動性形成や価格シグナルを参加者が協調して作るためのガバナンス枠組み、買い手が透明にクレジットへアクセスできるオープンソースツールの強化、そしてCarbonmarkの償却APIのような「需要を自動で駆動する仕組み」が上に乗れるよう、流動性レイヤーを公共財として整えることです。今回のポイントは、Web3ネイティブだけでなくWeb2的な入口も用意し、「新旧の参加者を増やす」ことに重心を置いている点でしょう。
結びとしてDionysusは、従来のカーボン市場が不透明なOTC取引やサイロ化された流動性に支配されてきたと指摘し、DeFi的ツールで「より効率的で包摂的な市場」を開くのがKlima Protocolの役割だと位置づけます。
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ Solowin、アリババ系Shangouと消費者参加型の炭素削減をブロックチェーンで実装へ
フィンテック企業Solowin Holdings(AXG)は2026年2月6日、アリババ傘下の生活密着型プラットフォーム「Taobao Shangou」および炭素資産開発を手掛ける杭州Bossenと連携し、「高品質カーボン資産×消費者向けインセンティブ×オンチェーンでのクレジット管理・流通」を統合したモデルを中国で展開すると発表しました。
枠組みとしては、Bossenが提供するカーボン資産をShangouのポイント/報酬設計に組み込み、AXGの資産トークン化基盤「Ferion」が条件確認、権利の紐づけ、移転・流通の記録、ライフサイクル管理を担います。ユーザーはグリーン配送の選択や低炭素商品の購入など、日常の選択に応じて報酬を受け取れる設計で、クレジットの活用を生活シーンへ広げる狙いです。同社は、消費者・プラットフォーム・金融サービスをつなぐモデルとして、包摂的な排出削減の拡大につなげるとしています。
■ 丸紅、水素吸蔵合金で「世界初」の国際輸送を実証
丸紅が水素吸蔵合金を用いた水素の国際輸送を世界で初めて実施しました。オーストラリアで再生可能エネルギー由来のグリーン水素を製造し、鉄・チタン系の吸蔵合金に取り込ませたうえで、コンテナ船でインドネシアへ輸送。到着後は水素を取り出し、燃料電池で発電できることを確認しました。吸蔵合金は圧縮・液化やアンモニア輸送と比べ、爆発リスクが相対的に低く、保管時に電力を要しにくい一方、合金自体が重く大規模輸送には課題があります。今回の実証では、合金が「原料」ではなく水素の「容器」であることの説明や、関税・通関上の取り扱い調整に約1年を要した点が大きな学びになったといいます。丸紅は当面、離島向けの中規模輸送や非常用電源用途など、実装シーンを絞った展開を想定し、JCM活用も含めたビジネス化の可能性を探る方針です。
■ 兼松、黒毛和牛で「世界初」Bovaer商用利用に向けた給与実証
兼松は2026年2月9日、敷島ファーム、dsm-firmenichと共同で、黒毛和牛を対象にメタン削減飼料添加物「ボベアー(Bovaer®)」の給与実証を実施したと発表しました。反芻動物の消化管由来メタンは畜産の主要な温室効果ガスで、日本でも2025年12月に飼料添加物を用いた給餌に関するJ-クレジット新方法論が承認されるなど制度整備が進みます。実証は2025年11月から70日間、北海道の敷島ファーム白老牧場で黒毛和牛24頭に慣行飼料へBovaerを添加して給餌。作業負担の大きな増加はなく、採食・健康・成長に問題なく安全に終了し、削減量はCO2換算で約5.5tと試算しました。今後は、削減実績の環境価値と畜産品をセットで提供する「カーボンインセット」を推進し、生産側のScope1と川下企業のScope3(Category1)の削減に貢献する方針です。
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現在、カーボンクレジットをブロックチェーン上で取引できるマーケットプレイス「CarbonMall」の開発を進めています。
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