🌍 クリマニュース 第11号
特集:Carbonmarkが“オンチェーン炭素市場”を実用化する──Klimaの実験から「使えるインフラ」へ
🔍 特集:Carbonmarkが“オンチェーン炭素市場”を実用化する──Klimaの実験から「使えるインフラ」へ
ブロックチェーンがカーボン市場にもたらす価値は、透明性やトレーサビリティだけではありません。本質は、分断されていた市場を“共通のデジタル基盤”でつなぎ、流動性とアクセスを一気に広げられる点にあります。Carbonmarkの連載「Building with Blockchain in the Carbon Markets — Part 3」は、その理想を「現実に使える形」に落とし込むために生まれたCarbonmarkの役割を、Klimaの初期の学びから丁寧に描いています。
起点は2021年のKlimaDAOです。Toucan Protocolを通じて何百万トン規模のカーボンクレジットがトークン化され、実世界資産がDeFiの流動性に乗るという“革命”が起きました。一方で、当時は市場として必要な機能や体験が追いついていなかったのも事実です。たとえば償却(retirement)はローンチ後に急いで実装された経緯があり、企業や一般ユーザーがウォレットやガス代といったWeb3特有の摩擦を越えて参加するにはハードルが高いままでした。つまり、技術的には成立しても「市場参加者にとって使える形」になっていなかった──これが初期の重要な教訓でした。
そこでCarbonmarkが担ったのが、“オンチェーン市場のUI/UX”です。CarbonmarkはKlimaのオンチェーン流動性を土台にしながら、購入・償却をより一般的な体験に近づけ、クレジットカードや銀行送金といった従来の支払い手段でも扱えるようにすることで、Web3の複雑さを表に出さない設計を目指します。プロダクトとしては「マーケットプレイス」であると同時に「SaaS」として提供され、企業・アプリ・個人が“オンチェーンの利点(透明性・自動化・追跡可能性)”を、従来の業務フローの延長で利用できることを重視しています。
需要側(企業・アプリ・個人)にとっての価値は、購入と償却が自動化され、検証可能な形で記録されることです。さらにAPIにより、フィンテックや予約、物流などのサービスに「カーボンアクション」を組み込めるようになります。記事では事例として、タイのCPグループ傘下のAscend Bit CorpがTrueMoney WalletにCarbonmark APIを統合し、2,000万人規模のユーザーがアプリ上で即時にオフセットできるようになった点が紹介されています。供給側(プロジェクト開発者)に対しては、レジストリ連携と「Carbonmark Direct」のような仕組みで、発行・販売・追跡をより透明に行える導線を用意し、従来の仲介構造よりも直接的に資金がプロジェクトに届く世界観を提示します。
この設計が示すのは、Carbonmarkが単なる「クレジット販売サイト」ではなく、断片化した市場を“オープンで相互運用可能なデジタル市場”へ再設計する試みだということです。すべてのクレジットは検証可能で、取引は追跡でき、償却はスマートコントラクトで二重計上を防ぎながらオンチェーンに刻まれる。価格発見が進み、清算が速くなり、余計な摩擦や中間コストを減らし、結果としてより多くの資金が高インパクトなプロジェクトへ流れる──記事は、ここにオンチェーン化の意義があると位置付けています。
そして重要なのが、Carbonmarkが“実験”から“制度・企業の採用”へ橋をかける存在として描かれている点です。EthereumのPoS移行による環境懸念の緩和、ICROAが関与する新レジストリのトークン化枠組み、世界銀行のCADTなど、周辺環境が整う中で、Carbonmarkは「使いやすさ」と「信頼」を最優先して普及の最後の障壁を削りにいく。Klima 2.0が加速する局面で、Carbonmarkは“表側のエンジン”として、オンチェーン炭素市場を実需のインフラへ押し上げる役割を担う──それがPart 3のメッセージです。
最後に。オンチェーン化は、カーボン市場を投機の場にするためではなく、透明で速く、参加可能性の高い資金循環をつくるためのものです。Carbonmarkのストーリーは、ブロックチェーンが「正しく使われたとき」に初めて、気候ファイナンスの基盤インフラになり得ることを、現実的なプロダクト論として示しています。
🔗 参考記事:
文・構成:濱田翔平(KlimaDAO JAPAN株式会社)
📰 今週の注目ニュース
■ Klima FoundationとRegen Networkが戦略提携──都市森林クレジットをオンチェーンで拡大へ
Klima Foundationは、ブロックチェーンを活用した生態系検証を手がけるRegen Networkと戦略的パートナーシップを締結しました。本提携により、米国の都市部における植林・樹木保全を対象としたCity Forest Credits(CFC)を用いた新たなカーボンクラスが、Klimaプラットフォーム上で立ち上げられます。
CFCはICROAに認定された非営利カーボンレジストリで、検証可能なCO₂除去に加え、大気質改善や洪水対策、社会的公平性といった共便益を提供する点が特徴です。直近では約3.1万トンが100万ドル超で取引され、1トンあたり34〜45ドルとVCM平均を大きく上回る価格を記録しました。
Regen Networkは本提携を通じ、デジタルMRVやレジストリ連携、クロスチェーンでの償却・追跡を実装し、都市型ネイチャーベースド・ソリューションをオンチェーンで拡張します。高品質クレジットとブロックチェーン基盤を組み合わせた次世代カーボン市場の動きとして注目されます。
■ 韓国で「自主的炭素市場(VCM)アライアンス」発足──公共と民間が連携し信頼性向上へ
韓国で、自主的炭素市場(VCM)の活性化を目的とした公共・民間連携のVCMアライアンスが発足しました。京畿創造経済革新センター、SDX財団、EcoEye、社団法人気候ソリューションの4者が協約を結び、「韓国型VCM」の構築に向けた取り組みを本格的に進めます。
同アライアンスは、近年指摘されている炭素クレジットの品質や実際の削減効果への懸念を踏まえ、MRV(測定・報告・検証)の高度化と、スタートアップや中小企業が自社の排出削減成果を効率的に評価・認証できる基盤整備を目指します。京畿革新センターは気候テックスタートアップの発掘・育成を担い、SDX財団は市場の戦略設計、EcoEyeは削減実績の定量化と透明性向上を担当します。気候ソリューションは、国際的な気候政策動向との連携や海外パートナーシップの拡大を支援する予定です。
公共と民間が一体となって高品質なクレジット基準を整備することで、韓国のVCMの信頼性と実効性を高める取り組みとして注目されます。
■ Puro.earth、ICVCM審査でCCP適格に──炭素除去クレジットの信頼性向上へ
フィンランドを拠点とする炭素除去クレジットのレジストリ Puro.earth は、ICVCM(自主的炭素市場のためのインテグリティ評議会)の審査を通過し、Core Carbon Principles(CCP)適格プログラムとして承認されました。今回の認定は、最新版のルールブックであるバージョン4.2に基づくクレジットを対象としています。
CCP適格となることで、Puro.earthはガバナンス、透明性、追跡システム、第三者検証といったICVCMの厳格な要件を満たしたことが確認されました。これにより、二重計上の防止や正確な排出量算定、労働・生物多様性・先住民保護などのセーフガードが確保されます。
Puro.earthは、バイオ炭、炭酸化素材、地質貯留といった炭素除去分野に特化した手法を扱っており、今後これらの方法論がICVCMの二段階審査プロセスで評価されます。ICVCMによると、現在CCP適格レジストリは8件となり、対象クレジットは約1億トンに達しています。高品質な炭素除去市場の拡大を後押しする動きとして注目されます。
✏️ 編集後記:実験の先に残ったものが、プロダクトになる
Carbonmarkを見ていると、どうしてもKlimaDAOの初期を思い出します。2021年当時のKlimaは、カーボン市場をオンチェーンに持ち込むという点で間違いなく先進的でしたが、正直に言えば「完成されたプロダクト」ではありませんでした。償却機能は後付けで実装され、レジストリとの調整も十分とは言えず、結果として市場との摩擦や混乱を生んだ側面もありました。実験としては大きく、成功とは言い切れないフェーズも長く続いたと思います。
ただ、その試行錯誤があったからこそ、今のCarbonmarkがあります。Web3に不慣れな企業や金融プレイヤーが何に戸惑い、どこでつまずくのか。需要側と供給側、それぞれに本当に必要な機能は何か。Klima 1.0の「うまくいかなかった点」そのものが、Carbonmarkの設計思想に反映されているように感じます。
ブロックチェーン×カーボン市場の文脈では、派手な構想や思想が先行しがちですが、最終的に残るのは「ちゃんと使われるプロダクト」だけです。Carbonmarkは、Klimaという大胆な実験を経て、ようやく市場と現実に向き合った形に進化した結果だと言えるでしょう。失敗を経て磨かれたプロダクトが、今後どこまで“市場のインフラ”になれるのか。そこにこそ、Klima 2.0とCarbonmarkの本当の価値があるように思います。
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